【号外その2】東和エンジニアリングが熊本地震の被災地域へ電話医療通訳を無償提供―災害時に通訳を「使える仕組み」にするには

令和8年熊本地震でお亡くなりになった方々に心よりお悔やみを申しあげますとともに、被災された方々にお見舞いを申しあげます。

株式会社東和エンジニアリングは、2026年7月29日、熊本県で発生した地震の被災地域を対象に、電話医療通訳サービス「Medi-Way」を無償提供すると発表しました。同社では一時期、私の妻も医療通訳をしていました。担当者の皆様がとても誠実で、研修・研鑽にも熱心かつ学びのサポートが手厚いものでした。その日々の積み重ねの結果として、現在はリーディングカンパニーとしての地位を築かれています。このたびの迅速なご対応に敬意を表します。 詳細はこちら⇒ 熊本県で発生した地震により被災された皆様へ「電話医療通訳サービス無償提供のご案内」

対象は熊本県内の被災地域にある医療機関や避難所などで、健康・医療に関する内容について24時間利用できます。対応言語は英語、中国語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、ネパール語など22言語で、提供期間は2026年7月29日から当面の間とされています。

災害時の医療通訳は「電話番号を知るだけ」では使えない

今回の案内で注目したいのは、無料提供そのものに加え、利用時の手順が具体的に示されていることです。

通訳を依頼する際には、施設名、担当者名、希望言語を伝えます。また、外国人患者本人から直接電話するのではなく、医療従事者や自治体職員から電話するよう案内されています。通話は災害対応の記録として録音され、希望言語の依頼が重なった場合には、かけ直しを求められることもあります。

これは、医療通訳が単なる外国語の電話相談ではなく、医療従事者と外国人患者の間に通訳者が入る三者間コミュニケーションであることを示しています。

医療通訳では「誰が話を進めるか」が重要

外国人患者受入れ医療コーディネーターとして私が重要だと考えるのは、通訳者を呼ぶことだけではなく、医療機関側が会話を適切に進行することです。

まず医療従事者が、患者の本人確認、主訴、緊急性、既往歴、服薬、アレルギーなど、確認すべき情報を整理します。そのうえで、一度に長く話さず、短い文章で通訳者へ伝える必要があります。

患者、医療従事者、通訳者が同時に話してしまえば、正確な通訳は困難です。電話通訳を有効に使うには、医療従事者が患者へ直接話しかけ、通訳者には発言を正確に仲介してもらうという役割分担が欠かせません。

録音と個人情報への配慮も必要

今回のサービスでは、災害対応の記録として通話が録音されると案内されています。

医療通訳では、病歴、服薬、妊娠、精神状態など、非常に重要な個人情報を取り扱います。緊急時であっても、可能な範囲で患者に通訳利用と録音について説明し、周囲に会話が聞こえにくい環境を確保することが望まれます。

避難所のようにプライバシーを確保しにくい場所では、相談場所を分ける、端末のスピーカー音量を調整するなど、小さな工夫が患者の安心につながります。

平時の訓練が災害時の対応力を決める

災害発生後に初めて電話医療通訳を利用すると、誰が電話するのか、どの端末を使うのか、患者へどう説明するのかが分からず、現場が混乱する可能性があります。

医療機関や自治体は平時から、通訳サービスの連絡先を受付、救急外来、病棟、避難所運営担当者で共有し、簡単な利用訓練を行っておくべきです。

特に、対応言語、利用対象、費用負担、録音の有無などは、サービスごとに異なります。導入しているという事実だけで安心せず、実際の利用条件を確認しておくことが重要です。

行政書士と医療コーディネーターにできること

外国人患者が抱える問題は、医療通訳だけで完結しません。

健康保険への加入状況、在留カードの紛失、勤務先との連絡、家族への説明、転居や避難に伴う行政手続きなど、医療と生活、在留制度が重なり合うことがあります。

私は行政書士、そして外国人患者受入れ医療コーディネーターとして、医療機関、自治体、企業、通訳事業者をつなぎ、外国人患者が必要な医療と生活支援へ途切れずにつながる仕組みを整えることが重要だと考えています。

今回の無償提供を、一時的な災害支援として終わらせるのではなく、地域の外国人医療対応を見直すきっかけにすることが求められます。

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熊本県で発生した地震により被災された皆様へ「電話医療通訳サービス無償提供のご案内」